イマージョン教育とは
「イマージョン教育校」という言葉をご存知でしょうか?
イマージョンとは、「immersion=浸された状態」のことをいい、その名の通り、英語にどっぷりと浸かることができる教育方針を採っている学校(幼稚園~高等学校)のことをいいます。
ちなみに、イマージョン教育は必ずしも英語には限らず、アメリカやフランス、オーストラリアには、日本語イマージョン教育を行っている学校もあります。
この記事では、イマージョン=英語イマージョン、を前提に紹介していきます。
初めてイマージョ教育を取り入れたといわれているのが、静岡県にある加藤学園暁秀初等学校です。
他に関東では、啓明学園初等学校(東京)、玉川学園小学部(東京)、LCA国際小学校(神奈川)、開智小学校(埼玉)、暁星国際小学校(千葉県)、ぐんま国際アカデミー初等部(群馬県)などがあります。地方都市でも、明泉幼稚園・高森明泉幼稚園(仙台)、英数学館小学校(広島)、リンデンホールスクール小学部・中高学部(福岡)などがあります。
イマージョン教育の特徴
イマージョン教育とは、英語自然に取得させることをいいます。通常の学校では、「英語を学ぶこと」自体を目的としていること比べると大きく違います。
イマージョン教育では、数学、理科、社会、体育、音楽、図工など他の科目を英語で教えます。また、先生・生徒間のコミュニケーションも英語で行われます。通常、授業は英語のネイティブスピーカーが担当します。
授業では英語のみを使用し、必要に応じてボディランゲージ、ジェスチャー、視覚教材など利用して子供の理解を助けていきます。
英語をコミュニケーションのツールとして身に付けるため、文法的な誤りを強制することなく、積極的に発言することを奨励していきます。
このように自然に英語に触れることができ、英語文化への理解も深めることができます。
イマージョン教育の目指すもの
一番の目的は、英語力を身に付けることにあります。英語のネイティブスピーカーに近い言語能力を身につけ、英語を自由に使いこなせる能力を身に付けることです。
ただし、イマージョン教育の目的は英語力の向上だけではありません。杜会文化能力を養うことも目的の一つとされます。
現代社会では、インターネットの発達により日本にいながら世界中の人々とつながることができます。また、外国人観光客や日本に住む外国人の増加などにより、普段の生活の中でも外国人の方と接触する機会が多くなってきています。
このような社会では、コミュニケーションツールのみならず、他の言語や文化を尊重することが求められます。
子どものうちから、自分の母国と異なる言語や文化を身に付けることで、大人になったときに他の言語や文化に対して理解しやすく抵抗なく接することができます。
インターナショナルスクールとの違い
学校教育法上の学校に当たるか否か
日本語を母国語とする日本人にとっては、英語で学校生活を送るインターナショナルスクールもイマージョン教育といえます。
もっとも、イマージョン教育校とインターナショナルスクールとでは大きな違いがあります。最も大きな違いは、学校教育法上の学校に当たるか否かです。
学校教育法上、保護者には子どもを小学校、中学校へ通わせる義務(就学義務)が課せられていますが、インターナショナルスクールの多くは、この学校教育法上の小学校、中学校に該当しません。そのため、保護者は同法で定められている就学義務を果たしていないことになってしまいます。
また、学校教育法では、小学校の課程を修了した者が中学校に進学することを予定されています。
インターナショナルスクールはここで言う「小学校」には当たらないので、インターナショナルスクールを卒業しても、学校教育法上の中学校には進学できなくなってしまうというデメリットもあります。
これに対し、イマージョン教育校は、学校教育法上の学校(一条校)に該当するため、そのようなデメリットは生じません。
イマージョン教育校の中身
それでは、イマージョン教育校ではどのようなカリキュラムが組まれているのでしょう?
日本でのイマージョン教育校の先駆けである加藤学園暁秀初等学校では、1992年に日本で初めてイマージョン教育を取り入れ、現在でもイマージョン教育校の代表のような学校です。
平成29年6月に開いた英語イマージョンクラスの体験教室も、先着90名の定員をオーバーする人気ぶりでした。
以下では、イマージョン教育校の具体的なイメージを持つために、加藤小学校のカリキュラムを少し見てみましょう。
1日の学校生活の50%以上を英語で過ごす
加藤小学校では、英語だけに傾斜するのではなく、日本語の習得も重視すると同時に、しっかりとした学力もつけることを狙いとしています。英語を手段として用いるのがイマージョン教育校の特徴ですが、加藤小学校では算数、理科、生活科等の授業を英語で学習しています。どのくらいの授業を英語で行うかについても学校ごとに違ってき、50%ほどというところもあれば70%以上を英語で行う学校もあります。加藤小学校では、1日の学校生活の50%以上を英語で過ごすようしており、そのことを通じて英語への自然な理解や文化への理解を目指しているそうです。
少人数制
1クラスは40~50人ですが、クラス内では2つのグループに分かれて学習しています。科目によってはさらにグループ分けをし少人数グループを組むようです。少人数制は、プリスクールやインターナショナルスクールでも多く採られているシステムです。
1クラス30~40人で編成される通常の公立学校の場合、積極的に発言する子と全く発言しない子に分かれてしまいがちですが、少人数制では全員参加型の授業が行いやすいです。
日本人としてのアイデンティティーも重視
また、加藤小学校では、1日の生活の50%以上を英語で過ごす一方、日本人としてのアイデンティティーの確立も重視しています。3~4年生では日本文化の習得プログラムが用意されており、華道、茶道、書道、箏曲(そうきょく。箏による音楽)、日本舞踏、長唄囃子、剣道の中から選択した1つの項目を1年間かけて習うそうです。
このような日本文化に触れるプログラムは、多くのイマージョン教育校で採られています。子どものうちから英語で生活する学校に通う場合、「日本人としてのアイデンティティーはどうするの?」という疑問がつきものです。ですが、海外に行ってみて初めて自分が日本人であることを強く意識したという方、日本の良さが分かったという方、日本の文化や歴史をより深く知りたいと感じた方も多いかと思います。英語重視の学校だからこそ、日本の文化・歴史・習慣に対する関心は喚起されやすく、むしろこうした環境やプログラムを通じて、通常の学校の子ども以上に日本人としてのアイデンティティーを確立することもできるのではないでしょうか。
ホームステイ
そのほか、加藤小学校では、国際交流としてアメリカでホームステイを行い、現地の小学校に通うという海外研修プログラムも用意されています。
こうした海外研修プログラムも多くのイマージョン教育校で採られています。
同年代のネイティブと接することは、自分の英語力や英語を身に付ける意義を実感するうえでとても重要です。
また、現在ではインターネットやSNSを通じて、現地で仲良くなったネイティブと連絡を取り続けることもできるので、語学学習やモチベーション維持に非常に有効な「ネイティブの友達を作る」ということも十分可能でしょう。